滑舌改善入門①舌の力,リラックストレーニング,言語聴覚士監修
みなさんはじめまして!言語聴覚士の林です。私はこれまで総合病院を中心に、吃音症、失語症の患者さんへのリハビリを8年行っていました。
現在は、言語聴覚士養成校の講師、滑舌や吃音にお悩みの方に改善レッスンを行っています。
このコラムのテーマは「滑舌改善・トレーニング」です。
音韻研究で有名なギエルート(1998)は
「滑舌が悪いと、人間関係を避ける生活を選びがちになる」
「治療をすることで、社会生活を良くすることができる」
と主張しています。私自身も様々な方のレッスンを行ってきましたが、本当にそう思います!
当コラムでは滑舌にお悩みの方に向けて、改善するためのトレーニング方法を心を込めてしっかりお伝えしていきたいと思います。
目次は以下の通りです。
入門編-トレーニング
コラム① 舌の力をリラックス法
コラム② 舌の動き滑らか練習
コラム③ 印象UP!息の出し方
コラム④ 音のつながりスムーズ練習
発展編-診断,お悩み相談
コラム⑤ 滑舌と関係する障害の可能性
コラム⑥ 滑舌と吃音の違いって何?
この順番で、ご紹介していきます。
すぐに取り組めるトレーニングを中心に紹介したいと思います。是非、練習を試しながら読み進めてみてください!
レッスン①舌のリラックス
さっそくですが、まずはお試しのエクササイズをしてみましょう。まずは滑舌が悪くなる原因の1つ目、「舌の力み」を改善する方法を行います。
目的
・舌の不必要な力みを防ぐ
・舌の力加減を身につける
・舌を動かしやすくする
①指を3本入れる
縦に指が3本入るくらい口を大きく開けましょう。すっと入る方は普段から口を大きく開けている証拠です。かなり開けるなあ・・・という感覚がある方は注意が必要です。
②舌を前に出す
口の大きさをキープしたまま、舌を前に出します。
③舌の脱力
下唇に舌を乗せて、力を抜きます。この時以下をイメージしてください。
・下唇に舌を預けるイメージ
・舌が唇の上で休んでいるイメージ
・全身の力を抜くイメージ
このように意識するとコツをつかみやすいです。
④10秒キープ
舌の力が抜けているか確認します。
◯舌の脱力ができている(正しい状態)
・舌がピクピクと動いていない
・舌の先端が平らになっている
×舌の脱力ができていない(悪い状態)
・舌がピクピクと動く
・舌の先端が平らでない
⑤ 10セット程度行う
以上の練習を10セット程度行ってみてください。舌が唇の上で休んでいる感覚を大事にしてください。
⑥ 身近な文章を読んでみよう
このトレーニングの後に、好きな文章を読んでみましょう。少しでも滑舌が良くなった感覚があれば、現段階では充分です。
滑舌が悪くなる!4大原因
ここまでは印象をつかんで頂くためのお試しレッスンでした。さて!ここからは本題に入っていきます。
滑舌が悪い原因は以下の4つが挙げられます。
①舌の力み
②使い方が不器用
③息の吐き方の問題
④音のつなげ方に問題
当てはまるものが多いほど、滑舌が悪くなりやすいと言えます。いくつ当てはまるか?数えながら読み進めてみてください。
①舌が力んでいる
滑舌が悪い原因の多くが力の入れすぎです。必要以上の力が入ると、スムーズに舌を動かすことができず、滑舌が悪くなってしまいます。
舌をベーっと出してみてください。しばらくすると
ピクピクする
舌が後ろに戻る
こんな方は舌が力んでいるといえそうです。舌の力みは先程行った「舌のリラックス法」を参考にしてみてください。
②舌の使い方が下手
舌が不器用な方も滑舌が悪くなります。例えば、舌の先端で、口の左右の端に触れる動作を繰り返してみてください。
舌の先で端にピタッと触れる感覚がある方はOKです。微妙にずれている方は、普段から舌を雑に扱っている可能性があります。
詳しくは滑舌改善「舌の使い方力UP」②でトレーニング方法をお伝えします。当てはまる方は後程トレーニングしてみてください。
③ 息を口の中心から出せない
息が口の両側から漏れてしまったり、うまく息を口の中心から出すことができなかったりするため、はっきり発音ができなくなってしまいます。
例えば、
「はい」→「はひ」
「ち」→「き」
このように完全に音が変わっていなくても、どっちの音だろう?と感じる発音になってしまうことが多いです。
このような方は話していて口角から息が漏れている可能性があり、息が口の中心から出ていないといえそうです。
詳しくは滑舌改善「印象UP息の吐き方」③でトレーニング方法をお伝えします。
④ 音の繋げ方の問題
1音の発音が出来るようになっても、連なっている音を正確に発音することができないと、滑舌が悪く聞こえます。
例えば以下の単語を読んでみてください。
「み か ん を た く さ ん た べ る」
うまく話せましたでしょうか。
次に以下の単語を読んでみましょう。
「みかんをたくさんたべる」
もし後者の連続音になると話しにくいと感じた方は、音の繋げ方が苦手な傾向があります。例題は文字数が少ないですが、文字数が多くなると、噛みやすくなる方、繋げ方に問題があるかもしれません。
詳しくは滑舌改善「滑らかな発音練習」④でトレーニング方法をお伝えします。
次回は舌の滑らか練習
コラム1まとめ
声に関する他の研究では、行動により相手に与える声の印象は全体の約45%あるといわれています。その内訳は聴覚情報が38%、言語情報が7%です。
滑舌が悪いとそれだけで全体の印象も悪くなってしまったり、自信の無さ(コンプレックス)が出てしまったりするかもしれません。根気強く、滑舌の改善を目指しましょう♪
お知らせ
ここで少しだけお知らせをさせてください。私林は言語聴覚士として、言葉にお悩みの方の個人レッスンを行ています。
・滑舌が悪い
・原因が自分ではわからない
・個人にあった練習がしたい
・吃音の症状もある
などのお悩みがある方は良かったら私のレッスンを受けてみませんか?個人にあったとレーニングをしっかり提案させて頂きます。詳しくは下記のお知らせの看板をクリックください(^^)ぜひお待ちしています。
著者
*出典・参考文献・書籍
1)菅原衣織, and 伊藤貴之. "倍音分析によるいい声作りの支援アプリ開発に向けて." エンタテインメントコンピューティングシンポジウム 2013 論文集 2013 (2013): 51-55.
2)平野美保. "パラ言語スキルに焦点化した音声行動学習プログラムの開発と評価: 職業生活に向けたコミュニケーションスキル獲得の支援のために." 日本教育工学会論文誌 34.1 (2010): 23-33.
3)本間慎治ら:”言語聴覚療法シリーズ7 改定 機能性構音障害”建帛社(2007):11-116.
4)小寺富子:”言語聴覚療法臨床マニュアル 改定第2版”協同医書出版社(2004): 348-397,418-439.
5)平野哲雄,長谷川健一,et al.”言語聴覚療法臨床マニュアル改定第3版”協同医書出版社(2014):364-439.
6)Gierut, Judith A. "Treatment efficacy: Functional phonological disorders in children." Journal of Speech, Language, and Hearing Research 41.1 (1998): S85-S100.
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