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構音障害コラム②リハビリが鍵!麻痺による構音障害
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構音障害コラム②運動障害性構音障害-リハビリが鍵!

コラム①では構音障害の概要を解説しました。

改めて全体を振り返ると、
コラム②リハビリが鍵!運動障害性構音障害
コラム③舌の使い方の問題!機能性構音障害
コラム④構造の問題!器質性構音障害
コラム⑤発展編!簡易チェック
でしたね。

今回はコラム②リハビリが鍵!運動障害性構音障害について解説していきます。

今回の目標は
・運動障害性構音障害を知る
・リハビリの重要性を知る
・舌を正確に動かしてみる
です。

構音障害とは

では、さっそくいきましょう!

運動障害性構音障害とは

定義

廣瀬ら(2001)は運動障害性構音障害を 

神経や筋の病気によって起こる舌などの運動障害を原因とする構音障害

と定義しています。

つまり、舌の神経や筋肉に問題が起こり話しづらくなるということです。

原因

最も多い原因は、
・脳出血
・脳梗塞
などの脳卒中の後遺症です。

ほかには、
・事故などによる頭部外傷
などがあります。

これらにより、様々な症状が現れ“発音がうまくできない”という状態になってしまいます。

症状

舌の神経や筋肉の問題には以下のような症状があります。

弛緩性麻痺
・筋肉がゆるゆる
・筋力不足により十分な運動ができない

痙性麻痺
・筋肉がガチガチ
・筋肉が硬くなってしまい運動ができない

運動失調
・動きがコントロールできない
・運動が定まらない

運動低下
・連続での運動で動かせる範囲が狭口なる

運動過多
・自分の意思に反した運動をおこなってしまう

難しいですね〜

「動かせないにもいろんな症状があるんだ」
ということがわかればOKです!

こんな問題が起きたら、舌や唇が動かしづらくなることは容易に想像ができますね。

症状の具体例

運動障害性構音障害で起こる麻痺の場合、左右どちらか片方であることが多いです。

健康な舌半分と麻痺している舌半分で発音を行うことになります。

麻痺がある状態で発音をするとき、健康な舌半分が頑張って動きます。

例えば
舌を「べー」と出すとき

通常だとまっすぐ舌が出ます。

脳梗塞-リハビリしかし、麻痺があると
麻痺がある方向に舌が偏ってしまいます。

麻痺-舌の症状

このように、ただ舌を前に出すだけでも難しいのですから、発音のような複雑な運動はさらに難しいです。

ここで大切になるのが症状に応じたリハビリです。

リハビリでは、少しでも発音しやすくなるように練習をしていきます。

講師の視点:少し専門的な話をすると、運動障害性構音障害は別名があります。「dysarthria:ディサースリア」といい、言語聴覚士はこれを使う方が多いです。厳密には運動障害性構音障害とdysarthriaは違うものだと言われていますが、専門家の間でもいろんな意見があります。

舌を正確に動かす練習

構音の練習に入ります!

目的
大きな動作を正確にする

用意するもの
・鏡
・シール
・口紅

では、さっそくいきましょう!

大きく舌を動かす練習

①唇に印をつける

イラストを参考にして
等間隔で8箇所の印をつけます。

構音障害リハビリ

口紅などでチョンと印をつけても良いですし
シールなどを貼ってもOKです!

②口を開ける

口をあけてください。
目安は指が縦に2〜3本入るくらいです。

口の開け方-良い声

③舌の先端で印を触る

舌の先端で印に触れましょう!
右からでも左からでも構いません。
印を順番に触れながら1周してください。

④逆回りで印を触る

次は逆回りをします。
舌の先端でしっかり触れましょう!

⑤③④を繰り返す

1セットとして2セット程度行なってください。

発音よくする方法

ピタッと印に舌をつけることはできましたか?

始めはゆっくりでOKです!とにかく”ピタッと”を意識してやってみてください♪

慣れてきたら速度を上げて難易度を上げてみましょう^^

注意

重症度によっては、この練習は難易度が高い可能性があります。

無理をしてしまうと
・庇ってしまう
・変な癖がつく

最悪の場合、痛みが出てしまう…なんてこともあります。

入院中の方は、担当の言語聴覚士と相談しながらリハビリに励んでください^^

・リハビリを受けていない
・言語聴覚士に聞けない

こんな方は、私、林桃子へもお気軽にお問い合わせください♪

構音障害-言語聴覚士

弊社の言語聴覚士がアセスメントをさせていただいてから、お一人お一人に合ったリハビリを提案させていただきます!

 

発音のメカニズム

まずは、どうやって発音をしているのかをみていきましょう。

発音メカニズム

①運動指令が出る
脳の表面から ”「サラダ」と発音して” という指令が出ます。

②指令が伝わる
指令は、神経系を伝わります。

③舌や唇が動く

指令が届いて、舌や唇が動きます。

簡単にいうとこのような過程で発音をしています。

詳しくいうと、もっといろいろありますが、ここでは”舌や唇を動かすにはこういう伝達が起きているんだ”ということがイメージできればOKです。

なんで動かなくなる?

今度は、なんで動かなくなってしまうのかを見ていきましょう。

・指令を伝える神経
・指令を受け取る筋系
多くの場合、これらに問題が生じることで起こります。

【②指令が伝わる】に問題

指令がうまく伝達されない状態です。

どういうことかというと、脳の表面から出た指令が通る神経系に問題が起こると、情報が伝わらず発音ができなくなってしまいます。

指令が届かないので、その後に控えている舌や唇はうまく動けません。

構音障害-脳梗塞

【③舌や唇が動く】に問題

筋肉を動かせない状態です。

届いた指令に従い舌を動かそうとします。

しかし、舌や唇を動かすための神経がに問題が起こっているため、動かしにくいです。

こうして、発音ができなくなってしまいます。

 

舌や唇が思うように動かせない…と悩んでいる方の体の中ではこのようなことが起きています。

練習をして、しっかり舌を動かして発音を少しでも良くしていきましょう♪

 

発展編!簡易チェック

最後に発展編として、運動障害性構音障害チェックをしてみましょう。

セルフチェック

実際に舌を動かしたり発音したりして、当てはまるものにチェックをしてください。

1.同じ音を言い誤ることが多い
2.速い会話についていけないことがある
3.舌の先端で口の中の天井を触ることができない
4.脳血管疾患の既往がある
5.舌や唇を動かしづらいと感じる

この5つのうち、2つ以上当てはまる方は運動障害性構音障害の可能性あります。

改善方法

麻痺が起きている部分や程度などに応じた練習を行います。

症状で練習方法は異なります。

まずは、このコラムでご紹介した練習を行ってみてください♪

次回は機能性構音障害

舌に疲労感が出たら、一回休憩をしましょう。

無理は禁物です♪

ゆっくり確実に舌を使えるようにしていきましょう!

次回のコラムでは、舌の使い方に問題がある機能性構音障害についてご紹介します。

 


著者

林 桃子(言語聴覚士)

経歴

・リハビリテーション病院 勤務
・総合病院 勤務
・デイサービス 非常勤勤務
・言語聴覚士養成校 非常勤講師

参考文献・書籍・サイト
1)平野哲雄,長谷川健一,et al.”言語聴覚療法臨床マニュアル改定第3版”協同医書出版社(2014):364-439.
2)廣瀬肇,柴田貞雄, and白坂康俊.”言語聴覚士のための運動障害性構音障害学”医歯薬出版株式会社(2001):4
3)西尾正輝”ディサースリアの基礎と臨床 第1巻 理論編”インテルナ出版株式会社(2006):69-168.
4)https://www.dysarthrias.com/wp/disastersia/fundamentaltheory/
5)山脇正永. "構音障害の病巣と経過: 嚥下障害との比較." 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) 30.3 (2010): 413-417.

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