吃音症,どもりの治療法入門③繰り返しへの対処法
当コラムは吃音(どもりの)改善策を入門①~④で解説しています。具体的には
入門① 吃音(どもり)の理解
入門② ブロックへの対処法
入門③ 繰り返しへの対処法
入門④ 引き伸ばしへの対処法
でしたね。
今回は入門③繰り返しへの対処法として「優しく話す法」を解説していきます。
今回の目標は
・繰り返し症状を理解する
・ハミング法でリラックス
・優しく話す方法を知るとなります。
では、さっそくはじめましょう!
繰り返しって?
繰り返しは連発ともいわれてる中核症状の1つです。
「と、と、と、と、とけい」
となってしまう音の繰り返し
「あり、あり、あり、ありがとう」
となる語の一部の繰り返し
この2種類があります。
中核症状の1つで、無意識に出てしまいコントロールすることは難しいです。しかし、ブロックとは異なり呼吸は止まりません。
繰り返しの原因と改善の指針
繰り返しの原因はブロック症状と共通する部分と、独自の部分があります。共通する部分についてはコラム2でもお伝えした通り、交感神経が働いて「声帯や舌の緊張」が起きてしまいます。
次の音に繋げるのが苦手
独自の部分としては2つあります。1つ目は次の音に繋げるのが苦手な場合です。例えば、3文字の単語「とけい」が言えないとします。
「と」は言えるけれども、次の音の「け」がなかなか出てこず「と、と、と」と繰り返してしまいます。
破裂音が苦手
破裂音とは、”た行”や”か行”のことです。これらは、他の音に比べて発音する時にパワーが要るため、通常でも力を使います。
吃音の方は舌などの力を制御することが苦手なので、破裂音はどもりやすくなってしまうといわれています。全員がこれらに当てはまるというわけではありませんが、このような状態だと推測できます。
改善の指針
このように、繰り返しは緊張や次の音へ繋げることが苦手なため、起こりやすい症状です。そこで入門③では、優しく声を出せるように
・ハミング法
・赤ちゃん話かけ法
を紹介します。どちらも繰り返しに効果が出やすい練習法です。是非参考にしてみてください。
ハミング練習
まずはハミングから練習していきましょう。ハミングには、軟起声という声帯を広くする効果があります。少し難しく感じるかもしれませんがいい声で発声するぞ♪くらいの気持ちでやってみてください。
①繰り返しやすい音を確認
苦手な言葉を1つ用意しておきましょう。例「お、お、お、お茶をください」。どれぐらい繰り返しが出るか確認しておきます。
②リラックスする
椅子に深く座ります。
体の力を抜いて座ってください。
2回くらい脱力呼吸をします。
脱力呼吸のやり方はこちら⇨吃音コラム②
③「んーーー」と2〜3秒
2〜3秒ハミングをします。はじめは、自分が確認できるくらい小さな声でOKです。
④「んーーー」と6〜8秒
6〜8秒くらいハミングします。手を口の前に置いて、手のひらに息を優しく当てるつもりで発声してみましょう。
ハミングが安定してできれば、呼吸が安定しているという目安になります。歌を歌っているつもりで楽しく練習をしてみてください♪以下の3点がチェックポイントです。
・声が震えていない
・始めから最後まで声量が安定している
・6〜8秒ハミングできた
⑤苦手な音を発声
もう一度苦手な音を発声してみましょう!少しでも繰り返しが改善していたら効果ありです!
赤ちゃん話かけ法
①リラックスする
椅子に深く座ります。
体の力を抜いて座ってください。
2回くらい腹式呼吸をします。
②内緒ばなしをする
静かなところでこそこそ内緒ばなしをするように声を出します。
「ありがとう」
「こんちには」
「おはよう」
自分が確認できるくらい小さな声でOK!
③赤ちゃんをあやす
今度は、声をしっかり出します。
しっかり声を出すけれど優しく話します。
具体的には、目の前に赤ちゃんがいると思いながら優しく声をかけます。
コツは、音をゆっくり優しく出すことです。
「ありがとう」
「こんちには」
「おはよう」
いきなり大きな声を出すと赤ちゃんが泣いてしまうかも!という気持ちでやってみてください♪
④苦手な音を発声
もう一度苦手な音を発声してみましょう!少しでも繰り返しが改善していたら効果ありです!
このコラムでは、できるだけわかりやすくお伝えするために症状ごとにトレーニングをご紹介しています。ここでご紹介したものは、繰り返し症状だけではなく他の吃音の言語症状にも有効です。
補足-苦手な音探し
ここまでは、繰り返し表現が出やすい言葉の改善練習をしてきました。しかし、そもそも苦手な音が何か?自覚をしていない方もいます。そこで補足として苦手な音の探し方を解説します。
①言いづらい言葉をメモる
生活をしていて、言いづらいなと感じる言葉があると思います。
その単語やフレーズをメモしてみましょう。
スマホやメモ帳、なんでもOKです。
②苦手に丸をつける
メモした苦手な言葉の詰まりそうになった部分に音に丸をつけてください。
例えば、
・最初の音
・息つぎの後
とにかく言いづらいと感じた音に印をつけます。
③苦手を探す
印をつけた音をまとめます。
例えば
「あ」「お」⇨母音
「か」「け」⇨か行
このようにまとめます。
こうすることで
「カ行が苦手なんだ」
「言いづらいの母音ばっかり」
などの発見があれば苦手な音探し成功です♪
精神交互作用に注意
トレーニングについてですが、日常生活で常に意識する必要はありません。心理学の世界では、「精神交互作用」という言葉を使うことがあります。
精神交互作用とは、意識をしすぎると逆に悪化してしまうという心の作用を意味します。過剰なトレーニングも悪化原因になってしまうので、一日10分など制限しながら行ってください。
一度意識すると止まらない・・・という方は姉妹サイトの下記のコラムを参考にしてみてください。
お知らせ
コラムに記載してあるトレーニングに当てはめてうまく行く人もいれば、うまくいかない人もいます。
これは、吃音は症状に個人差が大きいことが原因です。ですので、自分に合ったトレーニングを行うことが大切です。
一人で練習するのがしんどいな…と感じたら、私林桃子にお気軽にご連絡ください。オンラインレッスンなので、ご自宅でトレーニングをすることができます。
興味がある方は下の看板をクリックしてみてください。。
次回は、引き伸ばしへの対処法として『区切りの技術』を紹介させて頂きます。お楽しみに。
著者
*出典・参考文献・書籍
1)苅安誠. "吃音のブロック症状に対するリズム発話と運動制御アプローチの効果." 音声言語医学 31.3 (1990): 271-279.
2)小澤恵美,et al.”吃音検査法 第2版 解説”学苑社(2013):8-49.
3)都築澄夫”間接法による吃音訓練 自然で無意識な発話への遡及的アプローチ-環境調整法・年表方式のメンタルリハーサル法-”三輪書店(2015):2-27.
4)菊池良和”エビデンスに基づいた吃音支援入門”学苑社(2012):12-106.
5)平野哲雄,長谷川健一,et al.”言語聴覚療法臨床マニュアル改定第3版”協同医書出版社(2014):364-439.
6)伊藤元信,and古畑博代”言語治療ハンドブック”医歯薬出版株式会社(2017):364-439.
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