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吃音症,どもりの治療法入門②:ブロック症状への対処法
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吃音症,どもりの治療法入門②:ブロック症状への対処法-言語聴覚士が解説

コラム①では吃音の概要を解説しました。

改めて全体を振り返ると、
入門② ブロックへの対処法
入門③ 繰り返しへの対処法
入門④ 引き伸ばしへの対処法
でしたね。

今回は入門②ブロック症状への対処法について解説していきます。

今回の目標は
・ブロック症状について理解する
・体の力を抜く感覚を知る
・ゆっくり話す練習を練習
です。

では、さっそくいきましょう!

ブロック症状って何?

ブロックとは何か

ブロックは難発・阻止とも呼ばれ
「っっっっっとけい」
と初めの音が出ないものをいいます。

これが起こるとき、口や体がガチッと固まってしまい、呼吸も止まってしまいます。まるで、一時停止しているような状態です。海外のサイトで参考になる症状がありました。参考にしてみてください。

悪循環を断ち切るには

ブロック症状がある方は、多くの場合、恥ずかしいと感じ、人と話すことにコンプレックスを持ちます。

そして、そのコンプレックスのせいで、対人不安がさらに増えて、その不安が緊張に繋がりブロックが悪化するという悪循環になりやすいです。

この悪循環を断ち切るには、正しく症状を理解してトレーニングすることが大切です。

なぜブロックが出るの?

ブロックをはじめとする吃音症状は、現代の科学では完全に解明されてはいません。

なぜなら吃音は、言葉を発することだけでなく、環境や心理的な問題も起こるからです。

仮説となりますが、以下のような状態だと推測されています。

①交感神経が活性化
私たちの体は、危機を感じると交感神経が働きます。交感神経とは、体を戦闘態勢のときに働く神経です。

交感神経が働くと右の図のように、体全体にこわばってきます。

交感神経,吃音

吃音やどもりの場合、発声するタイミングやその直前に交感神経が異常に働いてしまうといわれています。

②呼気不足,声帯や舌が力む

以下の比較図をご覧ください。緊張し、交感神経が活性化すると、声帯に力が入りすぎてしまいます。

その結果、息が通るだけの声帯の広さがなくなります。

イメージとしては、首がしまっている状態で声を出そうをしている感じになります。当たり前ですが首がしまっているような状態だと、必要な息を口へ送り込むができません。

さらには、舌や顔、喉に力が入り過ぎてしまうため、発音に必要な動きをすることができないのです。

改善する指針

これを改善するには、ズバリ「脱力しながら話す」です!

なぜなら、脱力しながら話すことができると
・呼吸の調整がしやすい
・声帯や舌の緊張が取れる
・焦りにくくなる
このようなメリットがあり、ブロック症状が緩和するからです。

そこで、この入門②では
・体の力を抜く練習
・ゆっくり話す練習
をご紹介します。テーマはとにかく「脱力」です。体の力を抜く感覚を高めて行きましょう。

ブロック改善-体の力を抜く

まず最初に行うのは「呼吸で脱力」です。すごくシンプルなワークですが、脱力する感覚を味わうことができます。実際にやってみましょう!

⑴ワードの確認

ブロック症状が出やすいワードを確認しておくと効果を実感しやすくなります。例えば、「。。。。。う、うどん」など

⑵息を吸う
鼻からゆっくりたっぷり息を吸います。

⑶息を吐く
口からゆっくりと息を吐ききります。

※このとき、体の力が抜ける感じがします。
 この感じを覚えておいてください!

⑷脱力感を確認
⑴~⑶を3 回ほど繰り返して脱力感を確認してください。

⑸発声してみる
脱力した状態をキープしたまま、苦手なことばを話してみてください。完璧に言えなくて全然OKです。少しでも言いやすくなっていたら効果があった証拠です。

身体の力が抜ける感覚はありましたか?

なんとなく力が抜けてるな〜という感じが分かればOKです。

体の力を抜いてから、話す練習をすると力みにくくなります!

どこでもできるので、ぜひトライしてみてください♪

チェックポイント

体の力が抜ける感覚が分かった

肩や喉に力みがない

心が穏やかである

これらがクリアできたら、次へ進みましょう!

ブロック改善-ゆっくり話す脱力

次は『ゆっくり話す脱力練習』をします。

ゆっくり話すと発音動作が緩やかになります。こうすることで運動を自分でコントロールしやすくなります。

では、さっそくはじめましょう♪

①1秒に1音の速さで話す
まずはこちらのメトロノームを使えるかチェックしてみてください。
1秒に1回メトロノーム
テンポ60

確認できたら、メトロノームの「カチッ」に合わせて話しましょう。
母音を伸ばして音と音は繋げてください。
⑴お~は~よ~う~ご~ざ~い~ま~す~
⑵あ~り~が~と~う~
⑶お~ひ~さ~し~ぶ~り~で~す~
⑷い~た~だ~き~ま~す~

②1秒に2音の速さで話す
1秒2回メトロノーム
テンポ120
少しテンポが速くなります。
①と同じように「カチッ」に合わせます。

”音から音へのつながりをスムーズに!”
これを意識しましょう。
⑴おはようございます
⑵ありがとう
⑶お久しぶりです
⑷いただきます

秒針に合わせないときは『普段の半分の速さ』が目安です^^♪

③苦手な言葉を話してみる
自分が苦手とする言葉を話してみましょう。急いで話す意識ではなく、ゆっくり話す意識で発声してみましょう。少しでも言いやすくなっていればOKです!

注意事項:このコラムでは、できるだけわかりやすくお伝えするため症状ごとにトレーニングをご紹介しています。ご紹介したトレーニングは、ブロックだけではなく吃音の言語症状に有効です。

段階的に改善

焦らずマイペースで

レッスンはいかがでしたか?ブロック症状は完璧に治ることは難しいかもしれませんが、ある程度の緩和は可能です。

吃音の改善は、今の話し方を手放して『新しい話し方を獲得する』ことにあります。この感覚がつかめるまで1ヶ月〜1ヶ月半くらいとかかるといわれています。

今日の「脱力」をテーマとしたトレーニングを参考にしてみてくださいね。

専門家のレッスン

ここに書いてあることをやってみたけど、なんだかうまくいかない方は専門家に頼ることをお勧めします。よりあなたに合ったトレーニングを探すことができます。

弊社でもアセスメントを行なっておりますので、お気軽に下記の看板をクリックしてみてください。アセスメントだけでも大歓迎です^^

次回は、繰り返しへの対処法として『繰り返しへの対処』を紹介していきます!



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著者

林 桃子(言語聴覚士)

経歴

・リハビリテーション病院 勤務
・総合病院 勤務
・デイサービス 非常勤勤務
・言語聴覚士養成校 非常勤講師

*出典・参考文献・書籍
1)苅安誠. "吃音のブロック症状に対するリズム発話と運動制御アプローチの効果." 音声言語医学 31.3 (1990): 271-279.
2)大槻尚. "吃音に関する研究." 耳鼻咽喉科臨床 51.12 (1958): 1150-1186.
3)菊池良和”エビデンスに基づいた吃音支援入門”学苑社(2012):12-106.
4)平野哲雄,長谷川健一,et al.”言語聴覚療法臨床マニュアル改定第3版”協同医書出版社(2014):364-439.
5)伊藤元信,and古畑博代”言語治療ハンドブック”医歯薬出版株式会社(2017):121-137,276-279.
6)小寺富子”言語聴覚療法 臨床マニュアル改定第2版"協同医書出版社(2007):418-439.
7)河野道弘. "吃音の治癒−原因と治療法"株式会社ノンブル社 (2007):2-77

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