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失語症の分類,症状,治療方法
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失語症コラム① 失語症の分類,症状,治療方法を言語聴覚士が解説

みなさんこんにちは!
言語聴覚士の林桃子です。

私はこれまで、総合病院や吃音改善機関で患者さんへのリハビリを8年行ってきました。

今回のテーマは
失語症
です。

対象となる方

・家族が突然話せなくなった
・何を聞いても返答がない
・何を伝えようとしているの?

ご家族が失語症になってしまったら、このように感じることがあると思います。失語症の患者さん自身も同じような悩みを抱えていることが多いです。

当コラムでは初めて失語症になってしまったご家族のために、4回のシリーズで基本的な知識と対策を解説していきます。

全体の目次

コラム①失語症って何?
コラム②理解のリハビリ,聴く&読む
コラム③話すリハビリ,喚語困難,錯語
コラム④書くリハビリ,変な言葉を書いちゃう!錯書 

是非最後までご一読ください。

失語症

失語症とは何か

定義

失語症とは、言語聴覚療法臨床マニュアル(2014)によると以下のように定義されています。

脳損傷によって生じる後天的な言語機能の障害である。程度の差はあるが、原則として「聴く」「話す」「読む」「書く」という言語の4側面すべてが障害される。

わかりやすくすると

・病気をした途端、話せなくなってしまう
・聴く,話す,読む,書くが全てが苦手になる

こんな状態です。”全く言葉を知らない外国にポツンと一人で来てしまったような感覚”と表現される患者さんもいます。

原因

失語症の原因は、
・脳梗塞
・脳出血
・脳腫瘍
・事故による頭部外傷
など、病気や怪我などが挙げられます。脳梗塞,脳卒中

病気や怪我による脳外傷によって、脳内の神経細胞が死んでしまうことがあります。

神経細胞とは、言葉などの指令を伝達する細胞です。これが死んでしまうと、その部分の脳が働けなくなってしまいます。

失語症は大脳の言語をつかさどる部分の神経細胞が死んでしまった場合に発症します。

 

失語症の症状

失語症は「話せない」というイメージが強いのですが、これは一部に過ぎません。失語症の症状は、損傷を受けた脳の場所や大きさによって、程度に差はありますが「聴く」「話す」「読む」「書く」の言語機能全てに問題が起こります。

それぞれの言語機能ごとの症状を詳しくみていきましょう。 

聴く

 

聴覚的理解の低下,聞く力の問題

・単語の意味がわからない 
言葉の意味がわからなくなります。これを「語義理解障害」といいます。

文法の理解ができない
文法の理解ができず、何がどうなっているの?物事の関係性がわからなくなってしまうことを「統語理解障害」といいます。

 

話す

伝えたい言葉が出てこない
言いたい言葉が出てこないことを「喚語困難」といいます。

例)「あれだよ、あれ」

別の言葉が出る
メガネと言いたいのに「コップ」と言ってしまう状態を「語性錯語」といいます。言いたい単語が他のものに変わってしまうのが特徴です。

理解不能を話してしまう
日本語ではない何かを話してしまうことを「ジャーゴン」といいます。

例)¥☆$€%#☆〒々〆

 

読む

 

読解力の低下,文字が読めない

文字を読めない
読んで理解する力が低下してしまうことを「読解力低下」といいます。これは、漢字でも仮名でも起こります。

文字の意味がわからない
新聞などを読んで”大雨”と書いてあってもどういう意味なのかわからない状態を「語義理解障害」といいます。

文法が理解できない
例えば、
「今日は午後から大雨になる予報です」

と書いてあっても「今日なんなんだ?」「何が大雨?」など、文法の理解ができない状態を「統語理解障害」といいます。

 

書く

メガネと書きたいのに”コップ”
メガネと書きたいのに”コップ”と書いてしまうことを「語性錯書」といいます。書きたい単語が他のものに変わってしまうのが特徴です。

時計と言いたいのに「とてい」
時計と言いたいのに「とてい」と言葉の中の音が一部だけ変わることを「音韻性錯語」といいます。

時計と書きたいのに”とてい”
時計と書きたいのに”とてい”と文字の一部が変わることを「音韻性錯書」といいます。

 

症状はさまざま

代表的な症状は、このようなものがあります。これらの症状は、失語症になると全て現れると言うわけではありません。

脳の損傷する部分によって現れる症状は異なると言われています。現れる症状の傾向で失語症のタイプに分けられることがあります。

 

失語症の3つの分類

失語症は損傷された場所や現れる症状によって、タイプに分けることができます。ここでは、代表的な3つのタイプを解説します。

①全失語
②ブローカ失語(運動性失語)
③ウェルニッケ失語(感覚性失語)

今回は「聴く」と「話す」の症状の特徴を交えながら、失語症のタイプ分類をご紹介していきます。

声によるコミュニケーションがどうなってしまうのか、詳しくみていきましょう!

失語症の
タイプ

音声言語
(聴理解と発話)
の主な特徴

合併しやすい
症状

聴覚的理解の
重症度・特徴
発話の特徴

全失語

単語の理解も難しい。

同じ言葉を繰り返してしまう。

右片麻痺
  

ブローカ失語
(運動性失語)

単語は比較的理解できる。統語理解に問題あり。

意図した発音ができない。言いたい言葉と違う言葉を言ってしまう。

右片麻痺

ウェルニッケ失語
(感覚性失語)

話を理解することが難しい。言葉の意味の理解に問題あり

言いたい言葉と違う言葉を言ってしまう。理解できない言葉。

病識の低下

〈言語聴覚療法臨床マニュアル第3版P189より一部抜粋〉

このように、それぞれのタイプによって現れる症状が異なります。ただし、ご紹介した症状が全て出るとは限りません。タイプ分類は一つの目安と考えて、症状にあったリハビリを行うようにします。

失語症の治療の心構え

失語症と診断されると、治療に入っていきます。治療初期は医者と言語聴覚士がタッグを組んで進めていくことが多いです。この時以下の点を意識しておきましょう。

 

失語症の改善はゆっくり

失語症が良くなることを機能回復といいます。脳の細胞は死んでしまうと再生しないといわれています。

言語機能が完全に病前の状態に戻ることは難しいのですが、多くの場合、少しずつ回復していくと考えられています。

病気になったばかり時期は、一気に回復することもありますが、その後の時期は、ゆっくり時間をかけて機能回復していきます。

 

高原状態(プラトー)とは

ゆっくり回復する過程を高原で例えることがあります。失語症は回復を実感できる時期とできない時期があります。

実感できない時期も、実際には、少し回復しているのですが、地上から登って高原にいるような平坦な状態になるので高原状態(プラトー)といいます。

 

抜け道をじっくり見つける

高原状態でもリハビリは継続すべきです。続けていると、やがて抜け道が見つかります。その抜け道を登ると新しい高原に出ることができます。

新しい高原は、それまでいたところよりも生活がしやすいように感じます。このように目では見えにくい、回復を感じにくいけれど言語機能は変化していきます。

1つの高原で過ごす期間は個人差がありますが、高原と上り坂を繰り返すようにして少しずつ機能回復していくと考えられています。

 

言語聴覚療法の種類

実際に失語症はどのようなリハビリがおこなわれるのでしょうか。大きく分けると以下の2種類になります。

・言語聴覚療法
・AAC‐拡大・代替コミュニケーション

 

言語聴覚療法

言語聴覚療法とは、言語機能の維持・向上、生活の質の向上を目指すためのリハビリテーションをいいます。

具体的には、現れている症状やその程度、今後生活を送る状況に応じて行うリハビリのことです。

この言葉のリハビリを行う専門家を言語聴覚士といいます。

 

AAC-拡大・代替コミュニケーション

AACとは、得意な言語機能とテクノロジーを活用して、自分の意思を相手に伝える方法をいいます。

言語・非言語を問わず、コミュニケーションをとりやすくするものです。AACは3種類あります。

①ノンテク
  ジェスチャー
  身振り
  視線 など

②ローテク
  コミュニケーションノート
  筆談 など

③ハイテク
  アプリケーション
  AI など

AAC,コミュニケーション

これらは、患者さんの状態と生活を送る環境に応じて選び、コミュニケーションをより良いものにしていきます。言語聴覚療法とAACの練習を並行して行うこともあります。

失語症の方との接し方

入門編の最後としてご家族の方の心構えを4つお伝えします。

①話題を共有する
②質問は短く
③急かさない
④知りたいと思う気持ちを忘れない

それぞれ詳しくみていきましょう!

 

①話題を共有する

・指差しで確認
・実物や写真を見る
・話題を絞る質問をする など

話す内容がわかっているだけで、言葉が少なくても会話が成立することもあります。

 

②質問は短く

Yes/Noで答えられる質問をする

例えば
○「探しているのは眼鏡?」
×「何を探しているの?」

答えがたくさんある質問は避けて、Yes/Noで答えられる質問をするとすれ違いが減ることがあります。

 

③急かさない

忙しいとなかなか難しいかもしれませんが、急かすのはやめましょう。言葉に困っていなくても返答を急かされるのは嫌ですよね。

質問をして答えを探すのもOKですが、ときには待ってみるのも良いかもしれません。

 

④知りたいと思う気持ちを忘れない

「何を話したいんだろう?」と理解しようとする姿勢は、話し手に伝わるものです。

失語症の人が伝えようとする気持ちを大切に、あきらめず聞くようにします。

これら4つは聞き手ができる工夫です。

 

次回以降は症状別のリハビリ

リハビリの具体的な内容

次回以降はリハビリの具体的な手法を紹介します。内容は以下の通りです。

コラム①失語症って何?
コラム②理解のリハビリ,聴く&読む
コラム③話すリハビリ,喚語困難,錯語
コラム④書くリハビリ,変な言葉を書いちゃう!錯書 

コラムを通して、失語症についてわかりやすくご紹介していきます!

正しい情報を知り、より豊かなコミュニケーションを目指しましょう!

 

まとめ

失語症の症状はさまざまで、症状に合わせたリハビリが大切です。

子供が言葉を身につけるときや、新たに外国語を自由に使えるようになるには長い時間を要します。

傷ついてしまった脳で同じような作業を行うのですから、とても時間がかかってしまうことは容易に想像できると思います。

さらに、失語症の方は、一度は言語機能を獲得していましたから、以前の自分との違いに心が折れてしまうこともあるでしょう。

生活する環境や症状に合ったリハビリを続けると同時に、ご家族など周りの方の協力がとても大切になります。当コラムで紹介したリハビリ法を参考にしてみてくださいね。

 

お知らせ

ここで少しだけお知らせをさせてください。私林は言語聴覚士として、声や聴覚にお悩みの方の個人レッスンを行っています。 

・言葉が書けない…
・身近な相談者がいない
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という方は良かったら私のレッスンを受けてみませんか? 

個人にあったトレーニングをしっかり提案させて頂きます。詳しくは下記のお知らせの看板をクリックください(^^)ぜひお待ちしています。 



著者

林 桃子(言語聴覚士)

経歴

・リハビリテーション病院 勤務
・総合病院 勤務
・デイサービス 非常勤勤務
・言語聴覚士養成校 非常勤講師

参考文献・書籍

1)平野哲雄,長谷川健一,et al.”言語聴覚療法臨床マニュアル改定第3版”協同医書出版社(2014):180-236.
2)関啓子.”失語症を解く 言語聴覚士が語る言葉と脳の不思議”人文書院(2003)
3)医療情報科学研究所.”病気が見えるvol.7 脳・神経 第1版”株式会社メディックメディア(2011):7-8,16-33.
4)鹿島晴雄.”よくわかる失語症と高次脳機能障害”永井書店(2003):146-153.

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