聴覚障害の人工内耳の活用法,種類③
聴覚障害コラム①では、聴覚障害の意味や種類、原因や治療法について見てきました。
当コラムは全3回のコラムで解説しています。
今回は「人工内耳」について解説していきます。
人口内耳とは?
内耳に損傷がある場合、音を大きくしても補聴器の効果があまり得られません。このような、内耳に損傷がある可能性がある高度感音難聴の方などは、人工内耳が有効である場合があります。
内耳の機能
内耳には蝸牛と呼ばれるかたつむりのような形の器官があります。蝸牛は、耳から入った物理的な音を、電気的な信号へと変換する器官です。この働きの代わりをするのが、人工内耳です。
人工内耳を用いると、機械によって変換した電気信号を蝸牛へと伝えて、音として認識させることができるようになります。
聴覚障害の中でも高度感音難聴で補聴器が有効でない場合には、この人工内耳が選択肢の一つとなってきます。
人口内耳の構造
人工内耳は、メーカーにもよりますが、基本的な構造としては、インプラント、送信コイル、スピーチプロセッサ、そしてリモコンからなります。補聴器と異なり、手術を必要とする機械です。
機能
人口内耳の機能を紹介します。
スピーチプロセッサ
音声を処理する部分です。耳掛け補聴器のように、耳の後ろに装着します。
送信コイル
音の情報を体内の受信機に送信する装置です。磁力で耳の後ろの頭皮に貼り付けます。
インプラント
体内に埋め込む装置です。受信機と電極があります。
リモコン
音の大きさや聴こえ方の設定を操作することができます。
同じ補聴器機でも、補聴器とは全く別の装置であることが分かるかと思います。
構造・伝わり方
次に、音の伝わりかたを、順序立てて簡単に紹介していきます。
1.スピーチプロセッサが音を電気信号に変換します。
2.送信コイルから電気信号を体内の受信機に送信します。
3.体内に埋め込まれた受信機が電気信号を受信します。
4.電気信号は蝸牛に挿入されている電極に伝えられます。
そして脳へと音の電気信号が伝えられます。
その後、リハビリによって徐々に電気信号が音として聞こえるようになり、さらにその音を言葉として認識できるようになっていきます。
リハビリテ―ションが必要
音入れの必要性
人工内耳は、手術をすればすぐに聞こえるようになるわけではありません。また、聴こえ方の程度にも様々な要因により個人差があります。
手術後初めて音を入れることを「音入れ」と呼び、その後の調整を「マッピング」と呼びます。補聴器で、何度も検査と調整を必要とするのと同じく、人工内耳でも個人により必要な電気量や聴こえの設定は異なります。
手術後も定期的に病院に通院し、医師による診察と言語聴覚士によるマッピングが必要となります。
人口内耳の聞こえ方
人工内耳の音は、健聴者の聞く「自然な音」とは異なります。人によっては、ラジオの音声や宇宙人の声のようと表現されるような、機械的な音に聞こえます。
つまり、人工内耳手術によってコミュニケーションはとれるものの、自然な音を取り戻せるわけではありません。
特に、音楽を楽しむことや、もともと電気的な音である電話やテレビの音声を聞き取ることは、人工内耳装用者にとっては難易度が高くなります。
それでも音を認識できることはクオリティオブライフを充分向上させます。
関連動画
人工内耳についての関連動画となります。オススメを掲載させて頂きます。
まとめとお知らせ
まとめ
今回のコラムでは、人工内耳の基本的な仕組み、特徴などを述べました。技術の進歩により、今後は人工内耳の聴こえも今よりさらに改善し、普及されていくと予想されます。補聴器が有効でない場合にはぜひ検討してみてください。
最後に、手術後の禁忌を述べておきます。強い周波数の電磁波に近づくと、体内装置に影響を及ぼします。MRIなどの医療行為に制限がある場合もあるため、担当医には人工内耳装用者であることを伝え、常に装用者カードを持ち歩くようにしましょう。
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著者
*出典
・言語聴覚士のための聴覚障害学, 喜多村 健, 2002
・言語聴覚士テキスト第2版, 廣瀬 肇, 2011
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