難聴①原因や治療法,聴力の基準を言語聴覚士が解説
みなさんはじめまして!言語聴覚士の林です。
私はこれまで、総合病院や吃音改善機関で患者さんへのリハビリを8年行ってきました。
現在は、言語聴覚士養成校の講師、言葉に関してお悩みの方に改善レッスンを行っています。
今回のテーマは
「難聴」
です。全4回のコラムで解説していきます。
はじめに
難聴になると、コミュニケーションに消極的になり、社会的に孤立しやすくなります。社会的なつながりが少なくなると、会話でストレスを解消できなくなり、うつっぽくなる方もいます。また、会話をしないことで言葉を忘れてしまい認知機能の低下などの二次的な障害が生じることもあります。
そこで当コラムでは、難聴に対する基本的な知識や治療法をお伝えします。是非最後までご一読ください。
難聴とは?
意味
「難聴」とは『聴力が低下していること』をいいます。
・相手の話が聞き取れない
・何度も聞き返してしまう
・テレビのボリュームを大きくしてしまう
これらにあてはまる場合は難聴の可能性があります。
聴力検査の概要
聴力とはどのくらいの音の大きさが聞こえているかを表すものです。これは聴力検査で調べることができます。聴力検査では、音の大きさを示す、dB(デシベル)や低音から高音Hz(ヘルツ)まで調べます。
具体的には、日本聴覚医学会難聴対策委員会で以下のように示されています。
このように程度によって日常生活に様々な問題が生じます。そのため、コミュニケーション手段の補助や、周りの人の協力などが必要になります。
音の伝わり方を解説
難聴はどのような原理で起こるのでしょうか?普段の会話で使用している音声言語を例に説明していきます。
まず、下の図1、2を見てみましょう。
図1
図2
①相手の発した言葉が音波として、自分の耳に伝わります。
↓
②耳の中に入ってきた音波は鼓膜・中耳を経て、内耳へと伝わります。
↓
③音波は内耳の中の有毛細胞という部分で電気信号に代わります。この内耳に伝わる過程で音の高さなどの弁別を行っています。
↓
④電気信号は蝸牛神経を通り、脳の聴覚野へと伝わります。この聴覚野で言語なのか、生活音なのか、音楽なのか、などの弁別を行います。
このようにして、私たちは聞こえてくる音を聞き分けています。
そして、この4つの過程のうち特に、②音波が内耳へ伝わるまでと③電気信号が内耳から聴覚野に到達するまでの2つの過程のどこかに問題が生じると聴力が低下してしまいます。
難聴を時期別に解説
次は、難聴の種類について説明します。大きく以下の3つの種類に分けることができます。
伝音性難聴
耳に何らかの問題があり、音が脳に伝わりにくくなる難聴です。
具体的には、外耳が閉塞してしまったり、中耳炎になってしまったりするなど、音を伝える過程に問題によって起こります。補聴器を用いた治療に効果があることが多く、言葉の聞き分けは比較的良いです。
感音性難聴
電気信号を認識することが難しいことが原因で起こる難聴です。
具体的には、内耳の有毛細胞が減ってしまったり、蝸牛神経に問題が生じたりするなど、音を感じることができないため起こります。補聴器などの治療効果は低く、言葉の聞き分けが難しいのが特徴です。
混合性難聴
伝音性難聴と感音性難聴が混合しているものです。
難聴の原因
ここでは難聴の原因について時期別に説明します。時期別に分けると以下の2つです。
1:先天性難聴
生まれつき起こるものです。原因としては、遺伝や胎内感染、耳の奇形、低出生体重児などがあげられます。
2:後天性難聴
もともと正常の聴力があったにも関わらず、なんらかの原因で起こるものです。原因としては、加齢、耳鼻科疾患、ウイルス感染、薬剤性、頭部(耳)のケガ、長期的な騒音によるもの、ストレスなどがあげられます。
どちらも伝音性、感音性、混合性、それぞれの難聴になります。
このように時期によって原因が異なります。また、後天性難聴は中途失聴などとも呼ばれます。そして、現在、最も多いのが加齢に伴う老人性難聴だといわれています。
加齢に伴う難聴を解説
現在、最も多いといわれる加齢に伴う老人性難聴について、もう少し詳しくご紹介したいと思います。
老人性難聴は感音性難聴の1つで、具体的な原因は以下のようなものがあげられます。
・内耳の中の感覚細胞の障害
・脳への神経路の障害
・中枢神経の障害
・内耳の血管障害 など
加齢に伴い、これらが複雑に重り合うことで耳の聞こえが悪くなってしまいます。
感音性難聴である老人性難聴の大きな特徴の1つに言葉の聞き分けが難しくなることがあります。そのため、聞き返してしまうことも増えてしまいます。
こうなると、お互いにイライラしてしまったり、話すことを諦めてしまったり、家族とのコミュニケーションが難しくなってしまうことも多いです。
補聴器などの効果は得られにくいため、補聴器を装用した上でのリハビリテーションなどを行います。そうすることで、ここの程度に応じたコミュニケーション方法を専門家と検討することができます。
難聴コミュニケーションと家族の協力
難聴の方とのコミュニケーション手段をご紹介します。
難聴があるとコミュニケーション方法を工夫する必要があります。会話するために必要な対応を医師などと相談して行います。具体的には以下のようなものがあります。
1.聴力の補填
・補聴器の使用
・人工内耳の使用
2.視覚的コミュニケーション手段
・筆談
・読話
・手話
・指文字
先天性でも後天性でも、基本的な対応方法は変わりません。難聴の程度や生活環境に応じて、個々に合った方法を検討していきます。
そして、周囲の人の協力が必要不可欠になります。特にご家族の方の協力はとても大切です。そのため、生活で困ったことや、今後、困りそうなことなどを想定します。
それらに対する対応策を考えながら新しいコミュニケーション方法に慣れていくことが多いです。
まとめとお知らせ
まとめ
難聴といっても、原因はとても多く程度によって日常生活で困ることも人ぞれぞれだということがわかりました。具体的にどのようなコミュニケーション方法があるのかを次回以降のコラムでご紹介します。
コラムを通して難聴のコミュニケーションについてわかりやすくご紹介していきたいと思います!難聴を正しく知り、コミュニケーションをより楽しみましょう!次回の難聴コラムもお楽しみに♪
お知らせ
ここで少しだけお知らせをさせてください。私林は言語聴覚士として、声や聴覚にお悩みの方の個人レッスンを行っています。
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著者
*出典・参考文献・書籍
1)内田育恵. "高齢期難聴がもたらす影響と期待される介入の可能性." 音声言語医学 56.2 (2015): 143-147.
2)山田弘幸:言語聴覚療法シリーズ6改訂 聴覚障害Ⅱ−臨床編 建白社 P88〜142 2008
3)鳥山稔・田内光:言語聴覚士のための基礎知識 耳鼻咽喉科学 医学書院 P36〜80 2007