難聴④手話と指文字の活用で会話をスムーズに
難聴コラム①では、難聴の原因や重要度などについてご紹介しました。当コラムは全4回で解説していきます。
今回は視覚的コミュニケーション手段から「手話と指文字」について説明していきます。
難聴者は2種類を使い分けている
難聴者のコミュニケーションというと手話を連想する方が多いのではないでしょうか。最近では、ドラマなどでも使われることが多くなり、学びたいと思う人が増えてきているようです。そんな手話には種類があります。具体的には以下の2つです。
伝統的手話(日本手話)
昔から伝えられてきた表現です。主に、先天的な難聴者やその人と生活を送る人、ろう者教育を受けた者が使用しています。独自の文法体系があるのが特徴です。下記の動画を参照ください。
*ターカオリンtaakaorinチャンネル様から引用させて頂きました。
日本語対応手話
日本語の音韻や文法体系に手話単語や指文字を当てはめる表現です。中途失聴者や健聴者が使用することが多いのが特徴です。
伝統的手話の独自の文法体系とは、日本語の語順と異なる順番で手話表現を行うことなどをいいます。これは、よりスムーズに手話でコミュニケーションをとるための工夫だといわれています。
一方、日本語対応手話は基本的には日本語と同じ語順になります。難聴者は、会話の相手や状況などに応じて2つを使い分けているようです。下記の動画を参照ください。
*hokkaidoチャンネル様から引用させて頂きました。
表現のポイントは動きと位置
手話の特徴について、もう少し詳しく説明します。
手話の語彙数は4,000〜5,000語程度といわれています。単語に手話の動きと位置関係などの連続的な動きを使うことで複雑な内容も伝えることができます。
具体的な動きには、指や手首・腕・肩・首・頭などの身体の動きの大きさや速度、繰り返しなどがあります。他にも、視線の方向や表情なども大切です。
例えば、
「箱の中に袋をしまう」と「袋の中に箱をしまう」のように同じ単語を使っていても、動きと位置関係を変えることで内容の違いを伝えることができます。
指文字は50音
次は「指文字」について説明していきます。指文字とは、日本語の音韻に対応した手指記号です。音韻とは50音です。アルファベットに対応したアメリカ式の片指式指文字がモデルだといわれています。
指文字は1音に1つ表現が対応しています。さらに、「だ」「ば」などの濁音や「ぱ」「び」などの半濁音のような特殊な音も動きを加えることで表現ができます。
・濁音:「だ」「ば」など
形を保ったまま、横に移動
・半濁音:「ぱ」「び」など
形を保ったまま、上に移動
・促音:「ゃ」など
形を保ったまま、手前に引く
・長音:「ー」
人差し指で「|」と空書
このように、形と動きを組み合わせて50音と表現します。音韻に対応しているため、表現に時間がかかってしまうのがデメリットです。
メリットは、伝えたい内容がうまく伝わらない場合は、筆談ができなくても指文字で即座に補足することができることです。このような点から、指文字も状況などに応じて使用していきます。
*下記はこだ手話サークル様の動画です
難聴者にとって手話はオススメ
授業や講義を受ける場合は、手話によるコミュニケーションがより効果的です。もし補聴器などで音声でのやりとりが可能でも手話をオススメします。
なぜなら、授業や講義では長時間、傾聴する必要があるからです。長時間集中して傾聴すると、耳が疲れてしまいます。また、聞き間違い気づかず、そのままになってしまうこともあるようです。このようなことを防ぐためにも手話通訳を勧めます。
手話は効率的に表現するため、筆談やノートテイクよりも情報量が多いです。また、疑問をその場で質問することができ、効率的に学習することが可能です。
まとめとお知らせ
まとめ
ここまで難聴について解説してきました。難聴コミュニケーションでは、生活環境にあった方法を選択することが大切です。「①聴力の補填」「②視覚的コミュニケーション手段の使用」いずれかの方法から選び対処していきましょう。
家族の方は、難聴について正しい理解をして関わるようにしていきましょう。
お知らせ
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著者
*出典・参考文献・書籍
1)山田弘幸:言語聴覚療法シリーズ6改訂 聴覚障害Ⅱ−臨床編 建白社 P88〜142 2008
2)鳥山稔・田内光:言語聴覚士のための基礎知識 耳鼻咽喉科学 医学書院 P36〜80 2007