構音障害コラム③舌の使い方の問題!機能性構音障害
コラム②では、運動障害声構音障害について解説しました。
改めて全体を振り返ると、
コラム②リハビリが鍵!運動障害性構音障害
コラム③舌の使い方の問題!機能性構音障害
コラム④構造の問題!器質性構音障害
コラム⑤発展編!簡易チェック
でしたね。
今回はコラム③舌の使い方の問題!機能性構音障害について解説していきます。
今回の目標は
・機能性構音障害を知る
・発音の仕組みを知る
・ゆっくり発音動作をする
です。
では、内容に入りましょう!
機能性構音障害とは
定義
機能性構音障害とは、
舌や唇など発音に必要な器官の動きに問題がないにも関らず、発音がうまくできない
状態をいいます。
つまり、
・構造
・神経系
どこにも問題がないのに、発音がうまくできないということです。
症状と問題
・ラ行の発音が変
・サ行が言いにくい
・滑舌が悪い
このように、発音がうまくいかないせいで消極的になってしまい、最悪の場合、人と接することが不安になってしまうケースもあります。
滑舌との関係
滑舌が悪いと悩んでいる方は、今回ご紹介する機能性構音障害である可能性が高いです。
つまり、機能性構音障害が滑舌悪化の正体かもしれないということです!
では、なんで機能性構音障害だと滑舌が悪くなってしまうのでしょうか?
なんで発音しづらくなる?
発音を獲得する過程
私たちは、成長する過程で発音を身につけます。
発音に誤りがあると、自分で修正をしながら発音を獲得していきます。
しかし、発音の誤りを修正しないまま成長してしまうと、誤った発音方法が習慣になってしまいます。
原因は舌の使い方
修正できずに習慣化した状態は、舌の使い方の癖がある状態といえます。
この舌の使い方の癖のせいで発音がうまくできなくなってしまいます。
舌の使い方の癖とは
・余計な動きをする
・舌の動きが不十分
などです。
これらがあるせいで
・目的と違う発音
・発音が曖昧
このようなことが起きてしまいます。
具体例
例えば
「サ行」の発音が悪い / s /→/ th /になる
/ th /は日本語にはありませんが、英語など外国語には存在します。
「Thank you」の最初の音です。
/ th /は、/ s /に比べて舌を前に出して発音します。
ですので、この場合、舌が余計な動きをしているといえます。
発音は、とても精密な運動です。
異常というほどではないけれど、ほんの少し動きが違うだけで違和感を感じてしまいます。
舌の使い方の癖を改善することが機能性構音障害を改善する一番の近道です。
では、舌の癖を改善するためには、どのようなことが必要なのでしょうか。
ゆっくり発音練習
ゆっくり発音する練習に入ります!
今回は、発音に悩む方が多い 「ら行」 を使って練習をしていきます。
目的
・大きく舌を動かす
・発音時の舌を知る
用意するもの
・鏡
わざと大げさに動かしているので、発音はちゃんと聞こえないと思いますが、気にせず進めてOKです!
STEP1:舌のストレッチ
①口を開ける
口をかけてください。
目安は指が縦に2〜3本入るくらいです。
②舌で前歯の裏側を触る
口を軽く開けたまま
舌の先端で
上の前歯の裏側を触ります。
③舌で口の天井を触る
口を開けたまま
舌の先端で
口の天井を触ります。
このとき、”もうこれ以上奥までいかない”というくらい後ろまでいってみましょう!
④前から後ろへスライド
口を開けたまま
舌の先端を前から後ろに
スライドします。
⑤後ろから前へスライド
口を開けたまま
舌の先端を後ろから前に
スライドします。
STEP2:ゆっくり発音練習
①口を開ける
口をかけてください。
目安は指が縦に2〜3本入るくらい
②後ろ→前スライドで「ら」
口を開けたまま
舌の先端を後ろから前に
スライドします。
スライドさせながら
「らあーー」と発声します。
③前→後ろスライドで「ら」
口を開けたまま
舌の先端を前から後ろに
スライドします。
スライドさせながら
「らあーー」と発声します。
④他のラ行も同様に
「りいー」
「るうー」
「れえー」
「ろおー」
も同じようにやってみましょう。
ら行は本来、 舌の先端で口の天井をはじくことで音が出ます。
このはじき動作を一瞬でとても難易度が高いといわれています。
ですので、ゆっくりスライドさせています。
舌がどう動いているのかをイメージしながらやってみてください♪
舌のストレッチにもなるので、ためにやると滑舌良くなるなんて効果もあります^^
オススメ!基礎練習2つ
この練習をする前に、基礎練習をすることを激しくおすすめします!
ぜひ、基礎練習をしてください!
舌のリラックス練習
舌の動き滑らか練習
それぞれ、舌の底力を上げるトレーニングです。
この基礎練習をやってから、今回ご紹介したトレーニングをやってみてください^^
発展編!簡易チェック
最後に発展編として、機能性構音障害チェックをしてみましょう。
セルフチェック
実際に舌を動かしたり発音したりして、当てはまるものにチェックをしてください。
1.同じ音を言い誤ることが多い
2.同じ音が歪んでしまうことが多い
3.速い会話についていけないことがある
4.舌や唇を動かしづらいと感じる
この4つのうち、2つ以上当てはまる方は機能性構音障害の可能性あります。
改善方法
不器用な舌の使い方を鍛えるために、大きな運動から練習をして徐々に細かい運動を取り入れていきます。
まずは、このコラムでご紹介した練習を行ってみてください♪
次回は器質性構音障害
次回のコラムでは、構造に問題がある器質性構音障害についてご紹介します。
著者
参考文献・書籍
1)阿部雅子. "構音障害の診断と治療." 音声言語医学 43.3 (2002): 316-324.
2)平野哲雄,長谷川健一,et al.”言語聴覚療法臨床マニュアル改定第3版”協同医書出版社(2014):364-439.