舌の筋肉を鍛えるトレーニング法を言語聴覚士が解説
みなさんはじめまして!言語聴覚士の林です。
私はこれまで、総合病院や吃音改善機関で患者さんへのリハビリを8年行っていました。
現在は、言語聴覚士養成校の講師、滑舌や吃音にお悩みの方に改善レッスンを行っています。
今回のテーマは
「舌の筋肉を鍛える」
です!
はじめに
・まどろっこしい話し方になる
・滑舌にキレがない
・舌ったらずな幼い話し方になる
私は日々これらのお悩みを生徒さんからお伺いします。これらの原因の1つに舌の筋肉が弱いという特徴があります。
発音するときに、舌を使いこなすことは極めて重要です。そこで今回は、舌を鍛える運動についてをご紹介していきます!目次は以下の通りです。
・口の開きが足りない
・省エネクセ
・筋肉や神経に問題があることも
・舌のトレーニングの全体像
これらをご紹介します!実際に講師がレッスンで行う内容を大公開します。是非、最後までご一読ください^^
なんで舌が動かしにくい?
舌が動かしづらいなと感じる原因として主に考えられるのは3つです。
・口の開きが足りない
・省エネクセ
・筋肉や神経の問題
では、原因とそれによって起こる問題を詳しく見ていきましょう。
口の開きが足りない
発音をするとき、しっかり口が開けないで発音すると、狭い空間で舌を動かさなくてはいけません。これでは、舌の動きが小さくなってしまい、滑舌が悪くなってしまいます。
また、母音は口の開きを変えることで発声しています。日本語はこれがとても大切になります。しっかり口を開けいないとたくさんの空気を送り出すことができず、声が響きにくくなってしまいます。
省エネ癖
人間はできる限り楽な状態を求めます。怠けているというと語弊があるかもしれませんが、発音も楽な方を選びます。無意識に省エネで発音しようとします。
例えば一日中、パソコンに向かうような生活ですと、発話は最低限でなんとかなってしまいます。その結果、知らず知らずのうちに、相手に伝わる発音の仕方を忘れてしまうのです。
筋肉や神経の問題
舌のは筋肉でできています。
・筋肉
・神経
・構造
これらに問題があると舌は動かしにくくなります。これを専門的に構音障害といいます。構音障害はがある方は、努力では改善が難しいパターンもあります。構音障害を詳しく知りたい方はこちら。
▶︎構音障害コラム①
改善の方針
舌が動かしにくいのを改善するには、”動かしやすい舌を作る”練習をします。
具体的に何をするのかというと
・口角ピタッと練習
・舌の平衡感覚練習
・口を開けトレーニング
・早口言葉でしっかり発音
この4つを主に行います。
では、具体的にトレーニング内容を見ていきましょう♪
口角ピタッと練習
①左の口角に触れる
鏡を見ながら、舌の先端で左の口角に触ってみてください。
OK例
口角に舌の先端がピタッとついています。
NG例
舌の先端が上を向いてしまっています。自分では触っていると思ったけど、ズレていたら要注意です。
②右の口角に触れる
次に右の口角に触れてください。同じく感覚にズレがないかチェックしてみましょう。
③正確に10回
左右の口角に舌の先端でピタッと触れることを10回繰り返します。リズムよく練習していきましょう♪
舌の平衡感覚トレーニング
それでは、トレーニングを続けます。次は舌の平行感覚です。
①3本分-口を開ける
縦に指が3本入るくらい口を開けます。しっかり大きく口を開けていきましょう。
②まっすぐ前に出す
舌をまっすぐ前に出します。床と平行になるように、できる限り舌を出してください。
◯正しい状態
・舌が口角と同じ高さにある
・舌が床と並行に出せている
×悪い状態
・舌が下/上を向いている
・舌が床と並行でない
③10秒キープ
②の状態で10秒、平行さをキープします。
◯正しい状態
・舌がプルプルしていない
・平行さをキープ
×悪い状態
・舌がプルプル動いている
・平行さがなくなる
④ 10セット練習する
①~③をトレーニングあたり10セット行うことをオススメします。
最初から出来なくてもO Kです!練習を繰り返すことで、舌をこう使うんだ!という感覚を鍛えることができれば、少しずつ舌を動かしやすくなります。
この練習は舌の筋トレをしても効果があります♪ぜひ、トライしてみてください!
口開けトレーニング
母音を発声する時のポイントをご紹介します。写真を真似して、鏡を見ながら笑顔でトライしてみてください♪
通しであいうえお練習
「あ」
口を大きく開ける
縦に指が3本入るぐらい大きく開けます
「い」
口角を横に引く
「う」
少し口を尖らせる
「え」
口角を軽く横に引く
「お」
口を縦に開く
まずはこのあいうえおを1日10セットほど行います。
しっかり2語練習
次に、2語練習に入ります。
①「あ」「い」を10回
②「う」「い」を10回
③「お」「え」を10回
いかがでしょうか?普段よりも大きな口を開けて発音すると、舌も滑らかになり、表情も明るくなると思います。舌が堅い方は是非毎日練習してみてください♪
早口言葉トレーニング
まだまだ練習したい!という方は早口言葉の練習をしていきましょう。
・1つ1つの音をしっかり発音する
・口を大きく開ける
・舌が躍動しているイメージで発音
この3つを意識しながら、発音していきます。
【母音を鍛える】
・お綾や親にお謝り
「おああや おやに おあやまり」
・お綾や八百屋にお謝り
「おあやや やおやに おあやまり」
【前の舌を鍛える】
・ 生麦生米生卵
「なまむぎ なまごめ なまたまご」
・ マサチューセッツ州
「まさちゅーせっつしゅう」
・坊主が屏風に上手に坊主の絵を書いた
「ぼうずがびょうぶにじょうずにぼうずのえをかいた」
【奥の舌を鍛える】
・ 隣の客はよく柿食う客だ
「となりのきゃくはよくかきくうきゃくだ」
・赤巻紙青巻紙黄巻紙
「あかまきがみあおまきがみきまきがみ」
・ 貨客船の旅客と旅客機の旅客
「かきゃくせんのりょきゃくとりょかくきのりょきゃく」
まだまだ練習したい!という方は、有名な外郎売にチャレンジしましょう。
【外郎売-短縮版】
魚鳥、きのこ、麺類の食い合わせ、そのほか、万病即効あること神のごとし。
さて、この薬、第一の奇妙には舌のまわることが、銭独楽が裸足で逃げる。
ひょっと舌が廻り出すと、矢も盾もたまらぬじゃ。
そりゃそら、そらそりゃ、まわってきたわ、まわってくるわ。
舌を鍛える-まとめと発展
まとめ
中でも舌のトレーニングが鍵です!
残念ながら、すぐに発音を改善することは難しいですが、根気強く練習を続けると1ヶ月くらいで発音が変わってきます!
舌のトレーニングをして、滑舌をアップを目指しましょう!
滑舌トレーニング
このコラムで紹介したトレーニング意外にも滑舌を良くするトレーニングがあります。
例えば、
・余計な力を抜く舌のリラックス練習
・舌の感覚を鍛えるトレーニング
などがあります!
どれも、滑舌を良くするためのトレーニングですので、ぜひトライしてみてください!
滑舌についてもっと詳しく知りたい方はこちら♪
▶︎滑舌コラム①
舌の構造を知る
滑舌を改善するとき、舌をたくさん動かします。
どこを動かすのか、頭でイメージできるとトレーニングしやすくなります。
ぜひ、舌を鍛える練習の前に読んでみてください!
▶︎舌の構造コラム
レッスンのお知らせ
もし言語聴覚士の元でしっかり滑舌を改善したい場合は、弊社の個人レッスンをオススメします。
個人レッスンはパソコンを使って行いますので、移動せず自宅で受けることができます。
お一人おとりにあった改善方法をお伝えして、状況に応じてトレーニング内容を変えていきます。
興味がある方はぜひ、クリックしていただけると嬉しいです♪
お気軽にご連絡ください^^
著者
*出典・参考文献・書籍
1)平野哲雄,長谷川健一,et al.”言語聴覚療法臨床マニュアル改定第3版”協同医書出版社(2014):364-439.
2)阿部雅子. "構音障害の診断と治療." 音声言語医学 43.3 (2002): 316-324.
3)本間慎治ら"言語聴覚療法シリーズ7改定機能性構音障害"建帛社(2007):11-116.
4)西尾正輝”ディサースリアの基礎と臨床第1巻理論編"インテルナ出版株式会社(2006):69-72.
5)小寺富子"言語聴覚療法臨床マニュアル改定第2版"協同医書出版社(2004):348-397,418-439.
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